六回目








  

 いってしまった。二回も悪魔(しかも男)に促されていってしまった。
「……そうだ、樹海逝こう」
 京都に行ったって死ねないやと暗く呟きつつ、徴矢はシャワーを浴びていた。
 何かレイプされた後の人みたいだが、自分はそれほど痛ましい事はされていない。だが徴矢にとってセオにされた事は、死にたいと思うくらいに落ち込んでしまう行為だった。
 別に、勃ったり出たりすることは仕方ない。男の体はそういうものだ。男の象徴は欲望の象徴でもある。男に擦られても簡単に勃つに違いない。勃たなかったら色々と問題があるだろう。だが、乳首の問題は別である。あんな場所突かれたって舐められたって、男なんだから気持ちよくなどなかろうにと思っていたのに、なんでそんなに反応してしまったのか。確実に自分は乳首に反応していた。男なのに乳首に。乳首好きで無いのに乳首で。
「いやなんか乳首乳首ってキモイよ俺」
 しかし本気で情けない。男であるはずの自分が、何故女のように喘がなければいけないのだろうか。喘ぐのは女性の専売特許で燃える要素なのに、それを自分がやっても気持ち悪いだけだ。思い出してもサブイボが立つ。気分は大反省会だった。
 シャワーのコックを捻り、お湯を頭からぶっ掛ける。
 頭は冷えているのに、どうしても気分を切り替えることは出来なかった。
 自分は男だ。女のようにされていいはずが無い。女性を抱く事こそが、女性に欲情する事が正しい男の反応なのに、自分は男に抱かれて喘いでしまった。ほんのちょこっと、いや、ほんのちょこっとだからこそ凄まじく納得いかなかったのだ。
 自分は男だ。他の性別ではありえない。
 その前提が有るからこそ、セオにされたことはどうしても悔しかった。
「くそ……クソクソクソクソああもうコンチクショウ! マジ死ねあの変態悪魔!! 俺に不幸を被らせずにしてから死ね! 憎しみだけで人が殺せたらいいのにドチクショーめがあ!」
 徴矢はがすがすと風呂の壁を叩きながら、想像の中でセオにありったけの暴行を加えた。普通こういう場合泣く物だろうが、泣くことすら煩わしい。腹の中は既に煮えくり返っていてぐつぐつと怒りが泡を作っていた。煮え切った体がいっそう怒りを齎す。頭は苛々と不快な感覚が支配していた。
 今なら地球すら呪えそうだ。刃物を持つことが許されるなら、セオに向かって振り回しているだろう。
 一応言っておくが、徴矢は病んでいるわけではない。
 それほど徴矢はセオにされた行為が我慢ならなかったのである。幾らなんでも騙して強制的に喘がせて搾取だなんて酷すぎる。これではライク強姦だ。しかもセオは徴矢が嫌がっているのにわざと行為を続行させた。まさに悪魔の所業である。これに怒るな殺意を抱くなというほうが無理だ。
「畜生……俺の人生を幸せに過ごすためには、絶対にあいつの力は必要だ。……だけど、クソムカつく……滅茶苦茶殴ってやりてぇ……」
 とは言っては見るが、結果は目に見えている。
 絶対に自分が返り討ちに合うだろう。痛い目はごめんだ。
「……はあ」
 相手は自分より体格も良く、力も有り、魔法だって使えてしまう悪魔。ただの二次元エロオタクな自分に勝ち目など毛ほども無い。いや、塵ほども無いかもしれない。
 二回目の「食事」でそれは嫌というほど思い知らされていた。多分これからも、抵抗しても無駄だと思い知らされる事になるはずだ。いや、なるに違いない。
「だとすると……早く仕事を終らせてやるしか、俺には道が無いって事か?」
 一度だけ手伝えば、セオは自分から離れるといった。肝心な事は言わないが、言ったことで今まで嘘があったようには思えない。だから、多分本当なのだろう。
 そうなると、セオが満腹な内にさっさとラルヴァとやらを冥界に送るしか無い。
 楽かどうかも解らないが、やるしかないのだ。
「俺、実は今がすんげー不幸が配分されてる時期だったりしてな……」
「徴矢ー? まだお風呂に入ってるのかい?」
「げっ……」
 ドアの外からセオの声が聞こえる。
 変態悪魔と認識した相手に呼ばれ、徴矢は肩を震わせた。もしやこちらに来たりしないだろうか。風呂場で何かされたら、もう風呂に入れそうに無い。
「いいからこっち来んな変態! 大人しく座ってろ!!」
 徴矢は慌てながら、大きな溜息を吐いてシャンプーを手に取ったのだった。






「で、俺は何をすれば良いわけ?」
 がしがしと自分の頭をタオルで拭きながら、徴矢は仏頂面をセオにくれた。
 そんな徴矢に相変わらず人のよさげな笑みを浮かべながら、セオはベッドの上に座っている。徴矢の不機嫌さなど全く気にしていないようだ。そのことに一層イラつきながらも、徴矢はセオの答えを待った。
「うん、まずは一緒に被害者を探してもらう」
「被害者?」
 怪訝そうな顔で鸚鵡返しする徴矢に、セオは頷く。
「ラルヴァは人に取り憑いて初めて認識できるようになる。逆に言うと、人に取り憑いて貰わないと僕らには手の出しようがないんだ。生きている物は、冥界の物に触れられないからね。だから、取り憑かれた人を早く探し出し、悪に手を染める前にラルヴァを取り出してあげるんだよ」
「ふぅん……でも、誰に取り憑いてるのか簡単に解るのか?」
 いい質問だ、とでも言いたげに目を細めて、セオは胡坐を掻いた足に手を置いた。
「憑かれた者は、体中に痣が浮かび上がったり変な紋様が体に刻まれてたりするんだ。模様は人それぞれだけど……僕にその人を見せてくれれば、その人が憑かれてるかどうか解るよ」
「体にねえ……っていうかさ、それが女の子だった場合どうすんの? 見えない場所に有ったらどうすんだよ」
「大丈夫。紋様は必ず腕や脚に浮かび上がるから」
 根拠が解らないが、そういうものなのだろうか。いまいち納得できずにいる徴矢にセオは苦笑すると、まだ解らなくてもいいよと手を振った。
「兎に角、今日はそのままゆっくり寝て。明日一緒に探してくれるかい?」
 その言葉に、徴矢は目を丸くした。
「え…………今日は、探さないのか?」
 てっきり今から探すのだと思っていたのに。
 目を丸くしてそう訴える徴矢にセオは苦笑すると、優しく徴矢の濡れた髪を撫でた。思わぬ行動にまた体が固くなるが、他意のない行動だとすぐに解って相手を見上げる。
 セオはそのまま徴矢の髪を梳いて、ベッドから降りた。
「だって、今日は徴矢も疲れただろう?」
「そりゃ三回もヌけばいつもよりは疲れるけど……いや、っていうかそういう問題じゃなくて、ラルヴァは探さなくていいのかよ」
「うん。ラルヴァは、何故かよく解らないけど真夜中から明け方までの時間だけは動かないんだ。だから、寝ても大丈夫だよ。明日頑張って探そう」
 ね、と首を傾げ優しく微笑まれ、なんと言っていいのか言葉が出なくなる。何だか深刻そうな仕事なのに、そんなに適当で良いのだろうか。普通、そういう仕事は寝る間を惜しんで標的を探すものだろう。人を悪に貶める物を退治するのなら、結構重要な仕事のはずだ。
 なのにこの悪魔と来たら、そんなに急ぐ必要はないとでも言うように睡眠を勧めて来る。
(そんなに適当でいいんだろうか……)
「さ、お休み。徴矢」
 立ち上がりベッドから離れるセオ。色々と勘繰りたい事はあったが、正直な所を言うと徴矢も眠たくてたまらなかった。原因はセオにあるのだが、まあそれは置いといてやることにして、徴矢はタイミングよく出てきたあくびをかみ殺す。ここまで言ってくれているのだから寝た方がいいだろう。
 段々頭が回らなくなってきた徴矢は頭が濡れていないのを確認すると、ふらふらとベッドの上に上がった。そうしてごろりと仰向けになる。先ほど変えたばかりのシーツや布団が気持ちいい。
 すぐに下りてきた目蓋に視界を遮られながら、徴矢はちらりとセオを見た。
「……そういや、お前はどうすんの?」
 セオはその言葉に一瞬意外そうな顔をして、また笑顔になる。
「心配ないよ。僕らは寝なくても平気だから。……まあ、徴矢がいいって言ってくれるなら添い寝やお休みのキスを」
「いらんいらん。死ね」
「容赦ないね、徴矢」
 死ねっていうのは止めてよねーと困ったように笑ったセオだったが、徴矢が段々眠りの淵に引きずられているのを見やると、跪いてそっと徴矢の髪をなでた。
 心地良いその感触に一層眠気が襲ってくる。
 目を開けるのすら鬱陶しくなって目を瞑った徴矢の耳に、セオの優しげな声が聞こえた。
「おやすみ。……明日から、一緒に頑張ろうね。徴矢」
 心を擽るような、暖かくて本当に心地良い声。
 徴矢はその言葉だけはすんなり受け入れて、そのまま意識を手放して行った。





「……で、お前は何をしとるんだ」
 開口一番、自分としては最高クラスの低い声が漏れる。
 ぱっちりお目覚めの第一声でまさかこう言うとは思わず、徴矢は半眼で呆れ返っていた。
 まあ、何に呆れているかというと、勿論。
「え、何って……今の日本のお勉強」
 人ん家で勝手に本棚を漁って、漫画や本などを散らかしながら読んでいる悪魔にであるが。
 徴矢は口の端をピクピクとさせながら、起きぬけの不快感も伴ってイラついた言葉を返した。
「あのな、だからといって人の本を散らかしていいわけねぇだろこのスカポンタン」
 自分でも古すぎる貶し文句だとは思ったが、今目の前にいる悪魔はスカポンタン以外の何物でもない。そう、徴矢からしてセオはスカポンタンなのだ。
 意味は良く解らないが。
 まあとにかく、徴矢はそんな変な事を思うくらい、セオに怒りにも似た呆れを覚えていた。
 漫画を読んだり本棚を探ったりするのはいいとしよう。そこには触れられて困るような物は何も無く、寧ろ自分が真っ当な人間だとカモフラージュするための漫画や本が沢山置いてあるのだから、触れて読んで欲しいくらいだ。だが、セオはその読み方に問題が有るのだ。
 自分が寝ている間にどんな読み方をしたのか解らないが……
「つか、なんで俺の本が本棚の上に散らかってたり天井に張り付いてたりするわけ?」
 そう、ポルターガイストも真っ青なほど、徴矢の本は色んな所に張り付いたり散らばったりしているのだった。床に落ちた本は直せば済むが、天井に張り付いた本や本棚の上の物は骨が折れる。
 それらを全部自分が片付けなければ行けないのかと思ったら、思わず大きな溜息が出た。
 しかしセオは徴矢の様子に臆する事無く笑う。
「やあごめんごめん。結構面白くって、ついつい夢中で読んじゃったんだ。今片付けるから待ってて」
 言いながら、セオは散らかっている本を簡単に視認して、ぱちんと指を鳴らした。……と。
「…………うっそ」
 今までそこに静かに置いてあったただの“物”が、勝手に動き出し舞い上がり、次々に巣に帰るように本棚に戻り始めたのだ。ばさばさと音を立てる本達をぼけっと見つめながら、徴矢は思考停止を誘うようなその光景に頭を掻き回した。
 分かっている。相手が正真正銘の悪魔でこれも魔法の一つなのだと分かっているが、どうも理性と己の性格は理解してくれない。イッツアマジックとエセ外人のように言い放って、心の伴わない笑みを浮かべながらスルーしたいと訴えていた。
 が、まあ、例によって例の如く現実はそんなことを許してくれるはずが無く。
 徴矢の混乱する思考を置いてけぼりにして、本は忠実に元の位置へと収まってしまった。
 巻の並びも、ジャンルも、完璧だ。入れ違っている本は一つもない。
 思わず往年の魔女っ子の呪文を唱えそうになりながら、徴矢は白目を向きそうな眼でかくりと頭を傾げた。最早驚くことや突っ込む事すら疲れたのだ。アニメじゃないアニメじゃないと心の中で繰り返し歌うが、現実に魔法など無いと否定するのも限界がある。
 しかも起き抜けにこんな光景を見せられてしまっては、もうマジックとも言えなかった。
 人が何かを諦め許容する時というのは、こういう気持ちなのだろう。
 徴矢は二十歳前に大人の階段を上った気分になりながら、小さく「まはりくまはりた」と呟いたのだった。
「やあー、日本って面白い事になってるんだね〜! 胸の北斗七星が光ったら七つの球を集めて妖怪を呼び出し髪を伸ばしながら、オペに高額の費用を取りつつ背の高い女の子とらぶこめするんだよね! そしたらみんなダチ公になるんだよね!」
「間違った日本観を覚えるな頼むから」
 しかも何故か本棚からチョイスした話がどれも古い。そのような本を置いている自分もどうかと思ったが、徴矢はセオの好みが確実に昭和なのだなと覚った。流石数百年生きている悪魔なだけあって、レトロなものが好きなようだ。言いかえれば古臭い。
 心の篭っていない目でセオを見つめながら、徴矢は大きな溜息を吐いた。
「もういいからお前はテレビでも見てろ。……まだ七時か。飯でも作ろう……」
「はーい! オススメは?」
「2チャンだ2チャン。 母上様とご一緒でも見てろ」
 この頭ならば充分子供番組にも耐えられるだろう。そう思い、早くもその番組に齧りついているセオを半眼で見つめながら徴矢は頭をボリボリと掻いた。なんだかクソガキを預かっている気分だ。
 やるせない気持ちになりながらも、徴矢はバスルームの向かい側にある台所で適当に朝食を見繕った。寮での食事というのも有るのだが、今回は厄介な相手が部屋にいるのだ。目を離すと何をするか解らない以上、大学に行くまでは付きっ切りで監視していなければならない。
 その上仕事も手伝わないと行けないし、精神的に重労働だ。
 また幸せを逃すため息をつきながら、徴矢は卵を手に取った。
「卵焼き、味噌汁は……インスタントでいいか。米はあるな」
 手際よく簡単な調理を済ませながらちらりと部屋のほうを見ると、セオが不思議そうにこちらを見ている。
「それ、何の料理だい?」
 どこかキラキラとした目を向けてくるセオに、徴矢は言葉に詰まる。
 何の料理って、手抜き料理に他ならないのだが、それを自分で宣言するのも何だか悔しい。どういうか迷った末、徴矢は自分でも納得行かないような調子で答えを返した。
「簡素な日本料理」
 すると、セオは顔を輝かせ、四速歩行でぺたぺたと近付いてくる。
 子供がやるとそりゃあ可愛いが、いい体格をした大人がそうして近付いてきてもキモイだけである。徴矢は嫌そうに顔を歪ませながら、傍まで来てこちらを見上げるセオに目を落とした。
「いいなあ……僕も食べたいなあ……」
「お前は快楽がメシなんだろ。人間の食いモンなんて食えんのか?」
「食べられない訳じゃないよ。最も満足できるのがその糧ってだけで、基本的に悪魔もなんでも美味しく食べられるんだ。構造的にはそう人間と変わってるわけじゃないから」
 悪魔の豆知識を知りつつ、徴矢はふーんと鼻を鳴らした。そうすると、悪魔も角や翼が生えているだけで人間と同じように五感も心臓もあるということか。
 不思議な気分になりながら調理を進めいていたら、徴矢は無意識にもう一つ卵焼きを作っていた。
(……これもアイツの魔法か?)
 決して自分が絆されたからとは思いたくない。
 まあしかし作ってしまったものは仕方ないワケで、徴矢はまた溜息をつくと仕方なくセオの分もご飯をよそってやることにした。あくまでも、「仕方なく」だ。
 そんな徴矢の気持ちを知ってか知らずか、セオはとても嬉しそうに徴矢の後ろ姿を眺めていた。
「ほら、出来たからさっさとテーブル出して座れ」
「うん、わかった!」
 いいながらすぐさまテーブルの足を立てて座るセオに、思わず苦笑が湧く。
 悪魔なのに、こんなに子供のような行動をしていいのだろうか。
(って、俺は何を絆されてんだ! ったくあぶねーあぶねー……コイツ、普段は結構悪魔っぽくないから厄介だよな……)
 こうも子供のように明るく振舞われては、湧きたくもない情も湧いてしまう。
 徴矢はこれからはもっと自分の気持ちに厳しくなろうと誓いながら、テーブルに二人分の朝食を並べた。今日は珍しく卵焼きも綺麗に巻け、味噌汁も味見した限り不味くはない。徴矢はそそくさと座り箸を割りながら、ちらりと向かい側のセオを見た。
 セオは相変わらず興味津々の顔をしながら、自分の目の前においてある箸を割ってこちらと己の手を見比べている。何をしているのかと思ったが、徴矢はようやく相手の行動を理解した。
「箸の持ち方解んねーのか」
「うーん……解らないっていうか、難しいね、箸……」
 四苦八苦しているが、残念ながらその持ち方では卵焼きも掴めなさそうだ。
 徴矢は小さく息を吐くと、スプーンとフォークを渡してやった。
「ほら。無理せんで良いから」
「あっ、うわー、ありがとう徴矢!」
 自分の見知った物を手渡した途端、セオは何とも嬉しそうな顔に変わる。
 また一瞬心がキュンとかしてしまいそうになったが、危うい所で我を保ち飯をがっつく。全く、顔がいいと何かと得な物だ。
 そんな葛藤を繰り広げている徴矢を知ってか知らずか、セオは嬉しそうに卵焼きを器用に切り分けて口に運んだ。大きなアクションで口を動かしほくほくと嬉しそうに顔を歪ませている。
 そうして、きちんと呑み込んでからわあわあと騒ぎ立てた。
「徴矢っ、これ凄く美味しいねえ! このスープも……あちちっ、不思議な味だけどとっても美味しい! ライスもいいよー、いやあ徴矢って凄いね、これなら立派なシェフになれるよ!」
「手抜き料理でんなことになるかっ!」
 思わず本当の事を言いツッコんでしまった徴矢に、セオは気にせずそんなコトはないと胸を張る。
 そんなセオを呆れた目で見ながら、徴矢はほんのりと口に笑みを浮かべた。
 食べたことのない料理が余程美味しかったのだろう。もしセオが前に別の人が作った卵焼きを食べていればこんなもん食えたモンじゃないと思うに違いない。徴矢の作った料理はそんな物だ。
 だが、正直に言うと褒められると悪い気はしなかった。
(ま、まあ褒め言葉くらいは素直に受け取っておくか。貶されるよりはマシだしな)
 もしかして、これも感化されてきてしまったという事になるのだろうか。
 ふとそう思い、徴矢は思い切りかぶりを振った。
 まだ徴矢はセオを許した訳でも友達と思ったわけでもないのだ。まだ心を許している訳ではないに違いない。いや、許していない。なのに感化される訳が無いではないか。
 これからも、いや、きっとコレからもセオを大事に思うことなど無い。
 徴矢はどこか自分に言い聞かせるように、心の中でその言葉を繰り返しつつ味噌汁を啜った。
 セオは相変わらず嬉しそうに飯を食べ、テレビを見てと色々な事に夢中になっている。
 それを少しだけ可愛いと思ってしまうのは、多分自分が動物を嫌いじゃないからだ。
 上機嫌で笑うセオを見ながら、徴矢は最後の一口を頬張ったのだった。





 
 
   





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後書的なもの
 
ひいいいい何の進展もしてねええええええ
  長くなりそうなので一旦切ってみたんですが日常風景になってしまいました
  次回は多分話がご都合主義的に進むと思いますので
  い、今しばらくはこれで……っ

2008/10/12...       

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