No.13








 

 ぐらぐらと車内が揺れる。
 自分を見下している男達の顔までゆっくりと揺らぐようで、啓一は吐き気を覚えた。
 腹を殴られたせいだろうか、痛みが体を熱くさせてじくじくと傷が疼くような感覚を覚える。
 そのせいか意識も散漫になって、指すらも動かなかった。
「ど……して……」
 呻くような声さえ、掠れて言葉にならない。
 何故だと眉を顰めた啓一に、男達は笑った。
「どうだ、クスリの味はよ。ってあんだけ吸わせりゃワケ解んねーか」
「くす、り……?」
 何を嗅がせたんだと不安に顔を歪める啓一に、男の一人がおちょくるように言葉を継ぐ。
「大丈夫だっつーの、依存性とかねーしみーんな使ってるから! あ、でもヤリ過ぎて依存しまくってる奴とかいたっけ?」
「それただのヤリチンじゃねーの」
「だっけー」
 下らない冗談に怒る気力も湧かない。
 ただ体中が痛くて熱くて、だるい。
 車の天井をじっと見ているしか無い啓一は、何を考える事も出来ずにただ男達の会話を聞き流していた。
「つうかさ、お前って何なん? フツーのガキじゃん。何で捕まえて来いとか言われてんのかね」
「でもこんなに簡単に捕まえられてラッキーだろ、これで百万とかマジありえなくね?」
「だよねー! しかも開発お願いしまーすとか何の冗談かと」
 げらげらと笑う男達が何を言っているのかは理解できなかったが、その内容はあまり良いものでは無い事は啓一にも解った。もう少しだけ意識がハッキリしていれば理解できただろうに、こんな状態では耳を欹てることも出来ない。折角男達の気がそれていると言うのに、逃げ出すこともできなかった。
 上手く動かない歯をすり合わせて歯噛みしていると、男達はようやく啓一に目を向ける。
「ま、楽しけりゃいいんだけどね?」
「つかコイツネコ? タチ?」
「どっちでもいいじゃん。俺タチな」
「あっ、じゃあオレも。一回ジャニ犯してみたかったし」
「俺パス。動けねーんだもんなあ、ま、しゃあない」
 言いながら、男達はそれぞれ啓一の衣服に手を伸ばしてきた。
 一人は啓一の両手を取り頭上で固定して、一人はシャツをたくし上げ、あとの一人はズボンを降ろしという具合に変に役割を分担して啓一を脱がせていく。抵抗しようと足を動かしたが、まるで水の中にでも入っている時のようにゆっくりとしか動かなかった。
 おかしいと思ったが、焦ろうにも意識が朦朧としていてどうしようもない。
 大声すら上げられないままに、肌が晒された。
「全部脱がすと気分出ないしねー」
 調子よさげに嘯いて、男の一人が胸部にそっと触れる。
「うっ……」
(なん、だ……これ……)
 思わず声が漏れて驚くが、口が思ったように閉まらない。
「気持ちいいだろ? クスリのおかげだ」
 両手を拘束する男がにやけた声で言う。一瞬なんのことか解らなかったが、一息置いてようやく自分の体は薬に侵されていたのだという事を理解した。
(じゃあ、熱い、のも……クスリの……)
「ほら、声出せよ」
 車内ががたんと揺れる。しかし男はそれを気にするでもなく、触れた手で啓一の乳首を乱暴に抓んだ。想像した以上の刺激に、思わず口が大きく開く。
「ひっ、あ゙……!?」
「んだよ鈍ぃ声だなー。ほら、もっと喘げよ」
「ちょ、お前マジ鬼畜やし」
 囃す他の男に笑いながら、男はそのまま捏ねて弾くように指を動かす。
 気持ちが悪いと思う暇もなく啓一の胸には手が這い回り、緩い刺激を与えていた。
「ん、う……っ、や……だ……」
 体に快楽が走るたびに体が跳ねて、腹部の痛みまで再生される。快楽と痛みの狭間でどうしようもなくて、啓一は顔を歪めて体をねじった。
 またがたりと車内が揺れる。
「お前殴りすぎなんだよ、余計鈍ってんじゃん」
「ごめんごめん、ってか喘いでんだからこいつ開発済みじゃねーの? 突っ込むだけでよくねえ?」
「一応勃たせとかねーと締まんねーだろ、バカだなー」
 言いながら、足の位置に陣取っていた男が下着と一緒にズボンをずり下げる。
 股の間をひやりとした風が通ったが、啓一は身を捩る事しかできなかった。
「や、めろ……」
「嘘つくなよ、ガキ」
 ぐっと片足を持ち上げられて肩に乗せられる。苦しい体勢で足を開かされたが、呻く以外に何も出来ず啓一は臍を噛んだ。薬なんて嗅がされていなければ思い切り蹴り上げてやれたものを。
 そうは思うが、思うだけで体は動かなかった。
「ほら、さっさと勃てちゃえよぉ」
 反応もしていなかった自身をぐっと握られて、思わず息が止まる。
 嫌だと顔を歪めたが、男達はそれが面白いとでも言うように啓一の自身をゆるゆると揉みしだき始めた。体を捩って逃げようとするが、やはり薬が回ってしまっているのか体が上手く動かない。上げた足はすぐに捕らえられねじ伏せられて、一層足を大きく開かれる。
 面白がって観察するような男達の視線は嫌悪しか催さない。
 なのに、体は熱で火照って、弄ばれる自身は次第に勃ちあがり始めていた。
「ほーら、声だせって。もう勃っちゃってんだからさぁ? ほら」
「ひっ……あ……っあぁあ……!」
 手を休めていた男が思い出したように胸に手を這わせ、また執拗に指を滑らせた。
 いつの間にか汗で湿る肌は、その指に一々反応を示してしまう。男の手によって嫌でも快楽を与えられた自身は、啓一の意志などまったく関係なく勃起して汁を垂らしていた。
(くそ……なんだよ……なんなんだよ、これ……!)
 心の中で叫ぶが、口から出ようとするのは気持ちが悪い吃音ばかり。顔を怒りに強張らせたいが、だらしなくも情けない表情ばかりに顔が歪む。涙すら、相手の手管に答えるように流れていた。
 感情以外の全てが、言う通りにならない。
 体も、声も、表情さえも、薬とこの男達に支配されてしまっている。
 それなのに啓一は抵抗する事も出来ず、大股を広げて、間で自分を弄ぶ男達に答えるように喘ぐことしか出来ない。苦痛に泣く事すら、許されなかった。
(畜生……畜生……!!)
「あっれーこいつマジ泣きしてやんの! ななな、見て見て、こいつなっさけねえー」
「マジだ! うわー、こりゃ計らずともレイプものっぽくなっちゃったってか?」
「うぜー、じゃあ突っ込んだら余計泣くんじゃね?」
「マジで? じゃあもう準備しちまうか」
 半笑いでどこかで聞いたような最低の冗談を言いながら、男達は啓一の腰を上げて秘部を露わにした。
 汗で濡れていた臀部に空気が当たり、鳥肌が立つ。目を細めて涙を零す啓一をにやついた目で見返しながら、股の間にいた男が何かを取り出した。
「なんかスゲーこいつ反応鈍いしぃ……粘膜塗布だったら、効くかなぁ〜?」
「……っ?!」
 怪しげな小瓶には、ガーゼのような物が入っている。何なのかと眉を顰めるが、視界がぼやけていて訳が解らない。啓一のそんな状態を知っているのか、男達はまた忍び笑いを漏らすと、何かを臀部に垂らしはじめた。
「んっ……っ…………な、に……」
「ローションもしらねえやコイツ」
「ヤクで意識モーローなんじゃねえの?」
 秘部にまで垂れたその液体を、男は丹念に刷り込む。
 ぞくぞくとした嫌な感覚が伝わり体を震わせるが、相手は構わずにその液を体内へと押し込み始めた。
 体が熱いせいで、いやに冷たく感じる。まるで氷に触れているように、その液体は体の芯を冷やして更に感覚を鋭敏にさせていった。
「いっあっ……つめた、い……やめ……」
「火照ってんだからちょーどいいだろ! オラッ」
 声が途切れた刹那、秘部に一気に三本の指が突き立てられる。
「ぎっ……!! あ゙……!!」
 声にならない悲鳴が喉で震えるが、誰もその叫びに答える者はいない。
 ただ、車が再びがたんと揺れて、男達を傾ける。
 けれども、指は決して抜かれる事は無く、秘部の奥深くへと無遠慮に侵攻して行った。
「お前経験済みだろ……ええ? じゃなきゃいきなり三本とかねえよなあ?」
 中でいきなり指を立てられて、腹がひっくり返るような気持ちの悪い衝撃が走る。
「ゔぁあ゙あ゙っ!! や、あ゙、ぁああ゙……!!」
「まだ終わんねーよ!」
 まるで責め立てるように、男は中を押し掻くように指を動かして無遠慮に思い切り引き抜いた。
 内臓を触られているかのような嫌悪感に、引き攣る口が限界まで大きく開く。
 呻き声しか上げられない啓一が体を大きく波打たせているのを横目にして、男は小瓶の蓋をあけた。そして中のガーゼを取り出し、再び秘部を指で押し広げる。
 体を捻り逃げ出そうとする啓一を、腕を押さえつけていた男が強く縛めた。
 乳首を弄んでいた男は、啓一の苦しむ顔を楽しそうに見つめながら、先程から自慰に耽っている。こんな事をしているというのに、罪の意識など微塵もないような顔だった。
 誰も、啓一のことなど気にしていない。
 絶望的な風景だけが、啓一を支配している。
 思わず縋るように見つめた自分を嬲っている男は、啓一の負け犬のような顔を見て下卑た笑みを満面に湛えた。
 秘部を開く指が、限界まで襞を押し広げる。
「さーて、下のクチでクスリを味わったら、どーなるのかなっ?」
「……っ!!!」
 ガーゼが指と共に挿入されて、湿ったその綿布が粘膜に擦り付けられる。
「や゙、あ゙! ぁああああぁあ!!!」
 布を押し当てられる感覚に堪らず泣き叫ぶが、男は決して止めようとはしなかった。
「効きが早いっつうもんなあ? なあ、どうだ……ボーっとしてくるか?」
「い゙……あ…………、あ…………っ、ぁ……」
 濁声が、次第に消えていく。
 その変化に一番驚いたのは啓一だった。だが、驚くことすら、最早啓一には難しい。
 ごっ、と血液が急激に体内を流れるような音が耳の奥で聞こえて、人の声が遠くなる。嫌悪感や鳥肌すら一瞬で消え去って、急に体が熱くて熱くてたまらなくなってきた。
 口が閉じない。舌が、引きつったように動かない。
 涎すら飲み下せず、啓一の目は化物でも見たように瞳孔が開き丸くなっていた。
「お、完勃ちしてんじゃん。やっぱ効くんだー」
 男のこの言葉すら、嫌にぼやけて聞こえない。
 ただ、異常な興奮が全てを支配して、啓一の意識を消し去っていた。
「もういいんじゃねえの? ほら、こいつ指動かしただけで……」
「っあぁあ! う、あ、あ゙っ……ぁあああ……!!」
 動いた指が少しでも内壁に当たるたび、体が震えて仕方ない。声が出て、喉が引きつる。
 それ以外の事は、啓一には理解出来なかった。
「うわ……こいつカウパーだだもれじゃん……やばくね?」
「狂っちゃダメっては言われてねぇからいいじゃん。コイツ犯すのだって、指示通りだろ。殺すなっては言われてるけど、狂わせんなってはいわれてねーし」
「そーそー、さっさとヤッて金貰ってハッピーになろうぜぇー?」
 自慰をしていた男が、いつの間に出したのか、手の内に滴らせた精液を胸へと垂らす。
 ぬめるその感触すら体は我慢できず、声は歯止めが壊れてしまったかのように口から漏れ出た。
 啓一のその反応をお気に召したのか、男は再び己の物を扱きながら、精液に塗れた乳首を必要に触ってくる。仲間の行動に触発されたように、今まで指を秘部に突っ込んでいた男は、片手でベルトを解き始めた。
 荒い息遣いと嬌声だけが、車内に響く。
 最早人間などいないかのように、その場所だけが浅ましい光景で構成されていた。
「じゃあ、そろそろ犯ってやろうかな……!」
 指が引き抜かれて、秘部が物欲しげにひくつく。目に光が灯っていない啓一が、それでも大声で喘いで涎を垂らす光景に、男はごくりと唾を飲んだ。
 慌てたようにズボンを降ろし、男が己の物を啓一の秘部にぴたりと当てる。
 刹那。
――――――――!!!」
 車が急激に方向を変えて、車内にいた全ての人間をドアへと叩きつけた。
 
 
 
 
 
 
 
 啓一が車内で弄ばれている間、周囲では目まぐるしい攻防戦が繰り広げられていた。
「クソッ……啓一……啓一……!! 無事でいやがれよ!!」
 愛車のアクセルを人を踏みつけるように乱暴に押し込んで、今まで乱暴に扱ったこともなかったハンドルを何度も何度も荒く切り回す。
 エンジンからはきっと焼け付く臭いが漂っている。
 ブレーキはとっくに擦り減っているかもしれない。
 音を立てて幾度も曲がるタイヤは、最早溝すらないかもしれない。
 大事にして磨き上げた黒の美しい車体も、最早へこんで可哀相な姿になっているだろう。
 けれど、今はそんな事に構っている暇は無かった。
 僅か数メートルの前方を走る目標の車に、ありったけの速度で追いついて、何度も何度も相手の車の鼻っ面を車の側面で叩く。思い切り体にぶち込みたかったが、中にいる啓一を思うとそれが出来なくて、長坂は幾度も危険な運転を繰り返していた。
 ……こんなことになるなんて思わなかった。
 こんなに早く居場所がバレるなんて思わなかった。
 こんなに簡単に、こんなにもあっさりと掠め取られるとは、思ってなかった。
 啓一が自分の目の前で連れ去られるなんて、考えられなかった。
 ただそれだけが長坂の頭を支配していて、啓一を助ける事しか今は考えられない。
 それが異常なことだとも気付かずに、長坂は爪を立ててハンドルを握り締めながらアクセルを踏んだ。
「クソッ……クソックソックソッ畜生!!! なんて事を……俺はなんて事しちまったんだよ!! なんで俺は……ッ!!!」
 五度目の勢いを籠めた体当たりに、車体が大きく揺らぐ。
 しかし長坂の中の焦燥感や憤りは消える事がなく、増すばかりの訳の解らない感情に汚い言葉を撒き散らしながら再び体当たりをする為に距離を取った。
 相手の車が同じように距離を取る。
 こちらの攻撃に打って出ようとしているのだろう。
 長坂は痛いくらいに歯を噛締めると、並走する相手の車を鬼の形相で睨みつけた。
「クソがぁああああああ!!!!」
 ぶつかって、この怒りを相手へとぶちまけたい。
 自分が死んでも構わないから、己の体を焼き尽くすようなこの怒りにも似た感情を敵に思い知らせてやりたかった。
 だが。
 
 長坂の感情とは裏腹に、意識は知らずに策を立てていたのか。
 相手の車がぶつかってくると認識したと同時、長坂の手は右へとハンドルを切らず――――
 

 アクセルを、強く踏み込んでいた。
 
 
――――――ッ!!」
 道路とタイヤが激しく擦れ合って、ゴムの焼ける嫌な臭いと強烈な音が響き渡る。
 長坂は咄嗟に我に返りアクセルからブレーキに足を向けると、即座に車をターンさせた。
 夜闇の外灯に浮かび上がる道路に、車が大きな円を書いてくるくると回っている。誰もいない道を占領するように範囲一杯に暴れまわる車に、車内にいる運転手が必死に食らい付いてハンドルを回していた。
 しかし、狭い道路で切り返しが出来るはずも無い。
「ッ、啓一!!」
 咄嗟に腰を上げた長坂の声を合図にするかのように、車は真正面からガードレールに衝突した。
「啓一!!」
 泡を食ったように車から飛び出して、長坂は車へ向かって駆け出す。
 もし啓一がどうにかなってしまったらと考えるだけで、気が狂ってしまいそうな気がする。
 孝太郎のように自分の目の前から唐突に消えてしまったらと考えて、心臓が止まりそうになった。
 悪い想像ばかりが一瞬で浮かんで、長坂を恐怖に陥れる。
 しかし何故だかそれらの不安をいつもの様に打ち消す事が出来ず、長坂は青い顔をして後部座席のドアをこじ開けた。がこん、とドアの開く音では無いおかしな音で、ドアが外れる。
 構わずに、長坂は車内を覗き込んだ。
 片隅に、何かが固まっているのが見える。
「啓いっ…………」
 叫んで、長坂は言葉を失った。
「…………っ……」
 微かに聞こえた声を頼りに見た啓一は、無事だった。
 自分の起こした事で怪我をしていないことは一目で解る。
 だが。
「けい、いち……テメェ…………」
「っ、あ……ぁ……?」
 光の映らない、暗い瞳。体に擦り付けられた精液に、股間を伝うローション。
 そして、腹部に微かに残る痣。
 ――――何をされたかは、一目瞭然だった。
「啓一っ……おい……!!」
 震える声で車に這い上がり、啓一を引き寄せる。
 まるで人形のように力なく引き摺られた相手は、明らかに正気ではなかった。
 抱き上げて外に出すも、下半身は裸で外気に震えている。しかしその感覚すら解らないのか、啓一は長坂を光の灯っていない目で見つめて、喘ぐように口をぱくぱくと動かしていた。
「啓一……!!」
 きっと、クスリを使われたのだろう。
 この症状には何度か見覚えがあった。だが、これほど酷い状態は見たことが無い。
 オーバードーズなのは、明らかだった。
「クソッ……俺のせいで……!!」
 自分のジャケットを掛けて抱き締めるが、啓一は反応を示さない。ただ、体が熱いのが苦しいのか、弱々しく長坂の服を握り締めていた。
「テメェ……やってくれるじゃねえか……」
 地面に何かを打ちつけるような音が響く。
 聞いた事も無い下衆の声がして、長坂の前に先ほどまで運転していた男が現れた。
「…………」
「さっさとそのガキ渡せや、優男」
 腕に抱いた啓一の体が震える。
 深く抱き込んで、長坂は男を睨みつけた。
「テメェら…………許さねえ……」
「ハァ? そりゃコッチの台詞だっつうの」
 オリーブグリーンの瞳に、ゆっくりとこちらに銃を向けて立つ男の姿が映る。
 かちり、と安全装置を外す音がしても、長坂は相手を睨む事を止めなかった。
「渡せっつってんだろ」
「テメェら許さねぇ……絶対に……絶対に……!!」
 銃口を長坂の脳天へと向ける男を映す瞳が、震える。
 瞳孔は急激に収縮し、相手を睨みつける目はまるで獣のように大きく見開かれていた。
 急激な風が、一帯を吹きぬける。
「なっ……」
 怯む男に、長坂は射竦めるような凄まじい視線を向けたまま、痙攣するように引き攣る頬を釣り上げた。
 風が、まるで嵐のように全てを浚う。
「テメェら全員…………死にやがれ…………!!!」
 喉の底から吐き出すような声に、男が慄く。だが、相手が驚いているのはその声にではない。 

 
 長坂の瞳は、魔物の瞳のように恐ろしい光を湛えていた。
 

 










  
   





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後書的なもの
 
 しまった……
  遅れてすみません意外書くこと無いや…………
  
  えっと……
  
  こういう展開、大好きです!!

  

  

2010/10/22...       

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