一回目










  
 
 
 初夏の日も傾いて久しく、そろそろ夜半になろうかという時刻。
 眠りにつく者もいる時間だと言うのに、とある寮のとある一室では、奇妙な音が飛び交っていた。
『DESTROY!!』
「ぎゃああああ!! 死んだーッ!! 賢吾回復頼むッ!」
『マジで!? ってか俺もうMPないよ! 黒髪アンブロ頂戴ーッ!!』
『あわわわわちょちょっと待って先に回復しないと俺も死ぬって!!』
 小さな画面の中からどっかんばっこんと賑やかな音がして、徴矢の装着したインカムからは親友二人の叫び声が聞こえる。そして徴矢も彼らと同じように叫びながら、刻々と強制転送される時間に怯えてエンターキーを叩いていた。
「徴矢……聞いていい?」
「なにっ? ……っしゃあ賢吾サンキュ! 残りぶっこんで、SB連発するぞ!」
 言うなり、徴矢は素早くキーボードを叩いて画面を光らせた。
 爆発音と刃物が何度も何かを切り裂くような音が部屋に響き、パソコンが「クリティカル」とロボットのような声で叫ぶ。なんとも賑やかだ。
 しかしセオには何が起こっているのか理解できず、さっきからずっとパソコンの画面に齧りついている徴矢をみて、不満げに顔を歪めていた。
「それ、この前からやってるけどさー。一体なんなの?」
 より一層構われなくなった事が不満なのか、セオは徴矢の背中を見ながらぶーぶー言うが、徴矢はそれどころでは無い。またキーボードを叩きながら、その間にマイクを口の傍から離して声だけで答えた。
「ネトゲ……じゃなくて、ネットゲーム! 遠くにいる人とこの画面上で一緒に戦えちゃうRPGゲーム! 通信対戦! 今はな、ノートリアスモンスターと戦ってる! これ終ったら賢吾達は落ちっから、説明はもうちょっと待て! な!」
「……オチ……?」
 言うなりまたマイクの位置を戻して、後少しでくたばる相手に白熱の戦闘を繰り広げる。
 そう、徴矢は今、オンラインゲームにはまっていた。
 三人が今プレイしているのは、準日本製の大人気MMORPGだ。
 日本人が好むようなコテコテのファンタジーアニメチックな世界観が特徴で、2D描画の可愛いキャラとフィールドが幅広い層に受けたようで、今では小学生から中年までが遊んでいるとも言われている。この頃ではテレビでも頻繁にCMが流れていて、色々な場所で話題になっていた。
 言うなれば、ネット上の巨大な遊び場という所だろうか。
 だが、徴矢にとって、このネトゲはただの遊びでは無い。
 疎遠になってしまった三人を結ぶための、大事な手段なのだ。
 
 ――――数週間前、徴矢の親友の一人である黒髪が、遠くへ引っ越してしまった。
 理由は、父親が突然重病に掛かってしまったからだ。
 この周辺では最新の治療を受けられないから、引っ越さない訳には行かなかったらしい。
 どうにもならないことで徴矢もかなり悲しかったのだが、黒髪自身がそこで両親と一緒に頑張って幸せになりたいと言っていたので、止める事は出来なかった。
 黒髪の幸せを願うならそうすることが一番良い事だと思ったのだ。
 だが、やはり寂しさというのは付いて回る。
 メールはしていたが、互いに文面は素っ気無く書く事が多いタイプだったのでどうにも盛り上がらず、けれど話したい事はいっぱい有りすぎて書くことができなくて、どうにも空回る事が多かった。
 いつも直接話し合っていた身からすると、メールだけでの話し合いはどうにも満足できなかったのだ。
 それで何かいい案は無いかと考えていると、このネトゲのCMが目に飛び込んできたのである。
 これなら擬似的にではあるが、画面上で相手とリアルタイムで会えるし、話すのはチャットでなくても無料のネット通話サービスを使えば楽々会話できる。
 しかも、遠く離れているのに、一緒に同じもので遊ぶ事が出来るのだ。
 これ以上の良案は無い。
 そう考えて黒髪と賢吾を誘った結果、今に至る。
「よし、黒髪とどめだ!」
『うん!』
 背景に色とりどりの巨大なキノコが生えている森の中で、広場に追い詰められている巨大なモンスターに向かって可愛い女の子のキャラが弓を引く。
 可愛らしい声が聞こえた刹那、彼女の飛ばした弓が青い光を幾つも放射してモンスターに直撃した!
 大きな悲鳴と共に画面上に【DESTROY!!】と表示され、無機質な声が勝利を示す。
 とうとう倒れたモンスターは、安らかな顔をしてゆっくりと光の中へ消えていった。
「おっしゃー!」
『やーっと倒せたね〜、五回目だっけ? 俺マジで今日も全滅かと思った』
『運だよねえ……はぁ〜、でも相当アイテム使っちゃったね』
 黒髪がそういうと、画面上の弓を持ったゴスロリ衣装の女の子が悲しげな顔をする。
 その隣にいた魔法使いの格好をした女の子は、それににこっと笑ってジャンプした。
『まあまあ! でもさ、これでクエアイテム手に入ったじゃん!』
『うん! ギルクエだから一個でいいんだよね? これで全員二次職かあ〜』
「お前らどれに就くの?」
 徴矢も自分のキャラ―大剣を持ったピンクハウス系の女の子―をくるりと動かして二人を見る。
 二人のキャラは、それぞれ違う可愛らしい仕草をしてにっこりと笑った。
『俺明日徴矢と黒髪の二次職見てから決めるわ。バランス良くした方がいいだろ?』
『あっ、じゃあ俺、愛宕が決めるの見てから決めようかな。弓使いも種類あるし』
「なんだよー、結局俺待ち? プレッシャーかけんなよなー」
 棒立ちで表情だけ悲しげな顔に変えると、二人は笑ってくるりと回った。
『えへへー! じゃあまあ、前衛努めてくれるようなの期待ってことで!』
『時間も丁度だし、今日はそういうことで落ちよっか』
「ったくよー。じゃ、またメールとかでな」
 手を振ると賢吾と黒髪も同じモーションをこちらに返す。
『じゃ、おやすみー』
『愛宕、賢吾、おやすみ』
「おう、じゃあなー」
 そのまま光に包まれて消えた二人の後で、チャット欄に二人のキャラクター名が表示されてログアウトしたと表示された。これで通話も一応切断されただろう。
 インカムを外すと、さっきまで蚊帳外状態だったセオがここぞとばかりに画面の前に体をねじ込んできた。最近ネトゲにかまけてあんまり構ってなかったせいか、かなり顔が怖い。
 今頃気付いたが、それを今指摘してしまったら多分次の日は足腰立たなくなりそうなので、あえて無視をして徴矢はセオの体を邪魔じゃない程度に退けた。
「今から説明してやるからちょっとだけ離れろ」
「徴矢酷い! 僕この前からずっとラブラブするの我慢してるのに、僕がこんなに寂しいと訴えてるのにハグの一つもしてくれないんだ! 鬼だよ、鬼!」
「お前に鬼とか言われたかないわ!」
 そう、本当にこの間近にいる男には言われたくない。

 何故なら、このセオという男は――――正真正銘の、悪魔だからだ。
 
 橙色に近い美しい金の髪。まるで宝石のような美しい翠色の瞳。整った顔は中性的な美しさで、徴矢から見ても綺麗だと思えてしまう。
 ここで描写を止めれば、ちょっと髪色が独特なイケメンなんだなあとしか思われないだろうが、相手は悪魔。当然、人間にはありえない特徴を備えていた。
 捻じ曲がった枯れ木のような二本の角がその証拠。
 今は収納しているが、背中には広げればこの部屋一杯になる黒い翼が生えている。
 勿論キチンと翼には血が通っているし、角は本当に頭に突き刺さっているのだ。
 こんなもん、人間だと思うほうがどうかしている。
 出会った当初はこの姿をコスプレだと思っていたが、色々有って、徴矢も今はセオが本当に悪魔だと理解していた。詳細は省くが、納得しないと思考が狂いそうなことばかり起こったが故だ。
 そんなセオと、徴矢は奇妙な同居生活をしていた。
 勿論、徴矢は極普通の一般的な二次元オタクである。
 容姿は男としてそこそこ自信があるが、それ以外は別段変わった事のない正真正銘の人間だ。
 ……いや、極普通というのは語弊があるかもしれない。
 何故なら徴矢は、セオと恋人同士であり、主従でもあるからだ。
 なにがどうしてそうなったとはもう言いたくも無い事だが、とにかく、愛なんて誓いあっちゃったり永遠の契約なんて結んじゃったりしたもんだからそうなったのである。
 今ではセオと口で言うのも憚られる事をしてしまっているし、エロ本だって一緒に見ちゃうような仲になっちゃったし、大学やバイトから帰ってくればイチャイチャしたいと甘えられる始末だ。一応徴矢が主人でセオが下僕なのだが、結局その位置関係もうやむやなバカップルとして生活を送っていた。
 数週間前までは。
「悪魔からしても鬼だよーっ! ああ……僕はいつもいつも全力で徴矢を愛していると言うのに、徴矢は最近帰ってくるなり魔子ちゃんだアニメだゲームだとちっとも僕に愛を返してくれない……悪魔にこんな仕打ちを出来るのは徴矢くらいだよっオニー!」
「語尾みたいにしてんじゃねぇぞゴルァ!! 俺はきちんと構ってやってるだろ!」
「あんなペットみたいな構われ方じゃなくて僕は恋人同士の構われかたをしてほしいんだってば!」
 といわれて、徴矢は最近のセオのあしらい方を脳内プレイバックした。
 玄関先で飛びつかれてナチュラルに頭をなでるが、その後スルー。朝起きてキスをされて抱きしめられるが、この初夏の陽気では暑いとしか思えず引き剥がしてスルー。大学の帰りに、他人には見えないようにと己に術をかけたセオが毎回空から首根っこに抱きつくが、これも暑いとスルー。
 部屋の中では漫画を読んだりテレビを見たりだらだらして、結局甘い雰囲気もなくスルー。
(……そういや恋人っぽいことしてねえな)
「ほらー! 思うところあるでしょ!」
 考えてみれば、永久契結(徴矢とセオが永久に離れないと誓った契約の事)以降、本気で恋人のように仲睦まじく過ごしたのは五日もなかったかもしれない。
 一週間もせぬうちに熟年夫婦のようなこの枯れっぷりだ。
 徴矢はそれでも構わなかったが、外国産の悪魔はそれでは満足できなかったらしい。相変わらず顔を紅潮させて怒っている相手に、徴矢は大人の対応を心がけて素直に謝った。
「あーもー悪かったって。ごめんごめん」
 が、自分でもちっとも謝っているように思えない言葉が出る。
 これはヤバイ。顔のすぐ横で頬を膨らませた気色悪いイケメン顔に目を向けて、精一杯謝っているかのような笑顔を見せながら徴矢は必死の思いで頭を撫でた。
 普段こうして怒っている分にはセオは無害なのだが、これがキレてしまうと徴矢の手には負えないほどの鬼畜になるのだ。何度もその辛酸を味わっている徴矢としては、これ以上相手の神経を逆立てる真似はしたくなかった。しかし、これで機嫌が直るものだろうか。
 すると、セオはすぐに機嫌を戻しにこにこと笑った。
(わあ……。すごく、単純です……)
 悪魔なのに天使にも負けない素直さ。これが、セオの魅力の一つだ。
 少なくとも、今は。
 相手の思考が簡単でよかったと思いながら、徴矢は子供に喋りかけるような調子で、セオに問いかけた。
「あとで一杯好きなだけ恋人らしいことしてやるから、怒るなよ。な?」
「うんっ! じゃあもう僕怒らないっ」
 語尾にハートマークを多量に付けて喜ぶ悪魔に、ちょっと不安が過ぎる。
 なんだか幼稚園児と話している気分になってきた。もしかして契約したら悪魔の知能が退行するとかいう副作用とかあるのでは無いか。幾らなんでもこれはない。
 にわかに心配になってきた徴矢を他所に、セオは暢気に画面を指差して言った。
「じゃあさ、徴矢。さっきも言ったけど、これどんなゲームなのか僕にも教えて。ケンゴ君たちと話すのに大事な物だってのは解ってるし邪魔はしないけどさ、見てる僕も楽しみたいんだ」
「セオ……嫉妬しないのか」
 出会った当初は賢吾や黒髪に嫉妬しまくりだったのに、今は何もかもを理解したような物言いだ。
 思わず驚くと、セオは少し呆れたように顔を歪めた。
「あのね徴矢……僕にだって一応遠慮とか協調性とかあるよ?」
「あ……あはは! じゃあやるか。えーと、ちょっと位置変わろうか! ほら!」
「ごまかしたね」
 じとりとセオがこちらを睨むが、反応したら負けだ。早々に席を立って座れを椅子を叩くと、しぶしぶながらもセオは文句を言わずそこへ座った。
「えーと、んじゃまず画面の説明な。この前ドラクエやったろ」
「うん、ドラゴン倒さないで魔王を倒す不思議なゲームだよね」
「そこつっこむなよな? えーと、まあこれもそういうもんだ。ただ、操作はアクションゲーム寄りだな。無双系統。下に小さな枠があって、数字が書かれてるだろ? それに対応したキーを押せば魔法とかが出たりアイテムが使えたりする。……とりあえず、やりながら覚えるか」
 敵の居なくなったフィールドをしばしうろうろさせてみたが、中々筋が良いようでセオはもう操作に慣れ始めていた。キーボードを打つ手はぎこちないが、教えた事をきちんと理解してアイテムやスキルも使えるようになっている。やはり悪魔の学習能力は人間の比では無いらしい。
 まあ、たかがネトゲでそんな大層な事を言うのも違うかもしれないが。
「徴矢、敵と戦ってみたいけどどうすればいい?」
「そうだなー……じゃあ、初心者用エリア行ってみるか。この時間帯なら空いてるだろ。そっから右な」
 方向キーを動かすとかわいらしく走り出す女の子キャラ。
 それを見ながら、セオは首を傾げた。
「でもさー、なんで女の子なの? そういえばケンゴ君達も似たようなキャラクターだったけど、なんで? 職業は違うよね? 女の子ばっかりのドラクエ?」
「いや、ただ女の子のキャラクターが作れたから、魔子ちゃんに似せて三人とも作っただけだ」
 実を言うと、職業や服装は違えど、三人とも魔子ちゃんに似せるようにしてキャラメイクをしている。
 顔や髪型も自由に変えられるゲームだったから、どうせなら大好きなキャラクターに似せようと言うことで、三人とも職業違いの魔子ちゃんにしてプレイしていたのだ。
 本当は徴矢も魔法使いの魔子ちゃんが良かったのだが、じゃんけんで負けて剣士の職業に就く事になったというのはちょっとした秘密である。
「うわあ……」
 セオはそんな徴矢になにか言いたげだったが、しかしあえて呻きしか出さずに目的のフィールドへとキャラを走らせた。多分この顔は気持ち悪いなあと言いたかったのだろう。
 まあ、徴矢自身も時々自分をそう思うから否定はしない。
 しかし男の尻をみてゲームをするより、好きなキャラの尻をみてゲームをしたいでは無いか。
 オタクでは無いセオには一生解らないだろうが、そういうものなのである。
 因みに、徴矢たちのギルド(チームのようなもの)の名前は「デビマジフリーク」だ。
 魔子ちゃんズとふざけてつけようかとしたが、重複していたため使えなかった。間抜けな話である。
「ここ?」
 セオが画面上を指差すそこには、【輝きの草原】と書かれた看板がある。その向こうにはまばらに樹が立つ広い草原が続いていた。
「そうそう、そこに入って……あ、そこにゼリーみたいな生き物がいるだろ?」
「うん、美味しそうだねえ」
 赤や緑の蛍光色モンスターを美味しそうというその神経はちょっと理解できないが、とりあえず頷いてやってキャラをゼリーのようなモンスターの前まで移動させた。
「攻撃可能範囲になったら、そのスキルセットしたボタンを押せ!」
「こ、こう?」
 ショートカットさせたキーをセオが控え目に押す。と、画面上のキャラが可愛く技の名前を喋り、幾重もの太刀筋の残像を残して敵を切り刻んだ。画面上に幾つもの数字が表示され、画面上にあった対象の敵のHPゲージが点滅する。
 瞬間、ゼリーのHPゲージはゼロになり、可愛らしく目を×印にして光の中へ消えていった。
「そうそう、そうやって敵を倒すんだ。通常攻撃でもいいぞ。ここでは俺達の方が強いから、大抵一発で仕留められる。とりあえずやって……」
 みな、という前に、セオは既にその辺でうろうろしていたゼリーを狩り始めていた。
 しかも、派手で大仰な技ばかり使って。
「うわあ楽しいねえ! 派手な技で敵をボッコボコにして倒せるなんて、ゲームって面白いんだねえ! 僕、ドラクエよりこっちの方が好きだな! ほらっ、また倒れた!」
 まあそれは人それぞれだろうが、しかしセオは徴矢がそう答える隙もなく、ゼリー状の敵以外の敵もボッコボコにタコ殴りにし始めた。ああ、悪魔の性、まさに悪なり。
 しかもキチンと相手を見極めて技を出しているのが恐ろしい。
 今度決める二次職業(今設定している「剣士」などの役割をパワーアップさせたもの。所謂進化系。その進化前の「剣士」などは、主に第一次職業と呼ばれる)はバーサーカーがいいかもしれないとすら思えるほど、セオのやんちゃっぷりは凄まじかった。
 徴矢も普段は敵を見つければすぐに叩きに行くスタンスだが、セオの好戦的な行動には到底及ばない。徴矢のスタンスをゴジラだとすれば、セオの行動はゴジラと融合したキングギドラだ。
 ああ恐ろしい。
(うわー。しかも考え無しに叩いてるんじゃなくて、きちんと回復とかも考えてるから余計タチ悪い)
 もしセオが自分のキャラを作って徴矢たちと同じレベルになったとしたら、絶対に戦いたくない相手である。こんなもんと戦ったら自分もタダではすまなそうだ。
 セオはどうもこのような血みどろのゲームが好きらしい。
(あっ、じゃあ今度ガンシューやらせてみようかな)
 悪魔がネトゲ、というのも相当シュールな光景では有るが、悪魔がガンシューティングでハッスルという光景もかなりシュールに違いない。やばい、ちょっと面白くなってきた。
「あっ、徴矢、なんか下に違う文字がでたよ? 何だろ?」
「え? メンテかな?」
 いつもはチャット欄を使わないので、ログはいつもステータスのことやゲームについてのお知らせなどしか表示されないのだが、違う文字とはどういうことか。セオが今更変化に気付いたのなら、なにかメンテナンスの知らせでも入ったということだろうか。椅子の背凭れに手を置いて画面を覗き込むと、そこには思っても見ない文章が表示されていた。
 『Pete:安 い item うて 下さい お願い、します』
「……ピート?」
 コロンの前に付くのは、ネトゲでは大抵キャラの名前だ。
 気付けば、目の前には初期装備のまた一次職にも就いていないような簡素な装備のキャラクターがいる。風体からして、そういう台詞を言いそうなキャラだ。しかし徴矢とセオはそのキャラクターの容姿にはまず言及せず、何故か同時に変な所に着目して声を出していた。
「何でかゆうま文体!?」
「何でアイテムだけ英語!?」
 男同士で異種族のカップルという以前に、二人はどこか思考がおかしかった。








    

   






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後書き

  始まりましたエピソードの2!
  今回はお色気お笑い大乱闘でお送りします!
  っていうか初っ端からこんな解りにくくてすんません!!
  誰か説明を上手くできる頭を私にくれえええええ








2010/08/31...       
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